やりたいことが次々に見つかる、自分で作る楽しさに魅了された暮らし

今回は、町内の施設でお仕事をしながらさまざまな活動をされている福田さんにお話を伺いました。


ー紀宝町に来られた経緯を教えてください。

尼崎で生まれ育ち、東京でも暮らしていたんですが、18年前から縁あって和歌山県新宮市に住み、紀宝町内の職場に通っていました。当時の同僚が紀宝町の浅里地区にある家から引っ越すことになり、そこへ入れ替わる形で住むことにしました。ここから僕の紀宝町生活がはじまります。

ー住んでから驚いたことはありますか?

当時50歳近くの男が1人で引っ越してくるなんて、周りは警戒すると思いきや、誰ひとり何も聞いてくることなく受け入れてくれました。介護職に従事していたので、夜勤明けで日中に帰ってきた時は、地区の方々が「おかえり」や「お疲れさま」と声をかけてくれて胸がジーンとしました。たまに、住民間の光回線以上の情報伝達の速さには驚きますが(笑)。でもそれだけ気にかけてくれているってことなので嬉しいですね。

ー1日の流れを簡単に教えてください。

朝は5時ごろに鳥の鳴き声で目が覚めます。朝食とお弁当を作って、洗濯をして、ヤギのモイさん(3才)のお世話をしてから仕事に行きます。ケアマネージャーの仕事を終えて帰宅したら、食後は本を読んで、21時には寝るようにしています。

ー移住後に新しく始めたことはありますか?

まずはお菓子作りですね。イタリア料理のシェフをしていた兄からレシピをもらったのをきっかけに始めました。仕事のことなどでどうしても考え込んでしまう時に、レシピ通りにお菓子を作ると没頭できて心が落ち着くので、そこからレパートリーを増やしていきました。あとは植物に興味を持つようになりました。それまではスミレも知らなかったんですが…。当時の家の周りで、季節ごとにいろんな花が咲いたんですが、名前が分からないのでSNSに投稿したら教えてくれる人がいて、そこからコミュニティができました。特にこの地域は、コケの種類が豊富なんです。都会で売っているものがこのあたりだと自然に生えているので、好きな人は見に来てほしいですね。

ー今やお菓子はかなりの種類を作られていますよね。今日のレアチーズケーキも美味しいです!

植物好きのコミュニティの中に、僕の身近にたくさんあったゴンパチ(=イタドリ)でジャムやゼリーを作っている方がいて、身近なものでお菓子を作ったら面白いんじゃないかと思ったんです。それから近所の方にいただいた果実をお菓子にしてお返しする、自称・果実ファンドを始めました。庭の金柑や柿などの収穫が高齢になって難しくなった方の代わりに穫って、お菓子にすると本当に喜んでもらえました。あとは以前住んでいた家に山桃の木があって、山桃ジャムを作ってソーダ割りにして飲んでいました。すごく綺麗な色になって美味しいんですよ。

ー生活が変わったり、趣味が増えるなかで、考え方も変わりましたか?

以前は映画や音楽が好きでしたが、今は興味がなくなってしまいました。おそらくまだ都会にいたら楽しめるんでしょうけど、「与えてもらう楽しみ」より「自分で作り上げる楽しみ」でとても充実しています。もうここで十分面白いです。

ーお仕事のケアマネージャー以外にもいろんな活動をされているとか・・・?

仕事以外では、「紀宝町山歩き部会」、「筏師の道を守る会」、「お笑いサポートゼロワン(プラスワン)」。また副業として、熊野川の川舟センターで語り部をしています。あとは知り合いに誘っていただいたのをきっかけに、夫婦で俳句を始めました。俳句はこの先身体が弱ってきても楽しめると思うので、続けていきたいですね。50歳を過ぎて、「やらなければいけないこと」を捨てるようにして、「やりたいこと」を進んでやるようにしています。実際すごく楽しいです。いろんなことに手を出しすぎて、ときどき妻に怒られますが(笑)。

山歩きでのひとコマ

ーこの町で暮らしていて、いいなと思うところと不満なところを教えてください。

いいなと思うのは、「なかなか行けない場所」に住んでいることでしょうか。特に住んでいる地区はそう感じます。自然がいっぱいで遊ぶところがたくさんあるし、面白い歴史もあるんですよ。歴史に関しては、自分で調べて実際に行ったりして、地元の人が知らなかったことを知るのが楽しいです。反対に、不満なところはないかもしれません。都会でできていた生活はここでは実現できないので、求めるものがゼロなんです。ただ、台風や地震などの自然災害に対しては日頃から備えています。

ー今後実現させたいことを教えてください。

たくさんあります。やりたいことって、100個はなかなか書けないと思うんですが、僕の場合100はすぐに出ますね。ひとつは「川丈街道」と呼ばれる熊野川沿いの山中の古道を掘り起こして、紀宝町の浅里地区までつなげること。もうひとつは、飛雪の滝キャンプ場から子ノ泊山(ねのとまりやま)までのルートに、トレイルランニングのコースを作ることです。キャンプ場を拠点にしたスポーツのイベントをやりたいですね。観光客の方って、三重と和歌山の県境は気にならないと思うんです。今後は有志でつながって、この地域の情報発信や観光客の受け入れ態勢を整えていきたいです。まだまだありますが、これくらいにしておきます(笑)。

ー最後に、移住を考えている方へメッセージをお願いします!

今の状況を変えたくて移住先を探すのではなく、移住先で何をするか等のビジョンを持って探すことが大切だと思います。自分の好きなこと、得意なことが移住したい場所でできるのか、そして合っているのかを重視した方がいいと思います。でも無理はせずに、自然体で流れに任せると、自ずと考える、変わるタイミングがやってくると思いますよ。

福田さんのInstagram:@kumamoss
くまの里山体験のらホームページ

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